更新日:2026/08/24
産業廃棄物を事業として取り扱う場合、「産業廃棄物収集運搬業」と「産業廃棄物処分業」という2つの許可が関係してきます。
名前は似ていますが、両者は許可の対象となる業務が異なります。
簡単にいえば、
産業廃棄物収集運搬業は、排出事業者から産業廃棄物を収集して処分場などへ運ぶ仕事であり、産業廃棄物処分業は、運ばれてきた産業廃棄物を中間処理や最終処分する仕事です。
この記事では、産業廃棄物収集運搬業と産業廃棄物処分業の違いについて、許可制度の基本からわかりやすく解説します。
まず、「産業廃棄物処理」という言葉の意味を理解しておく必要があります。
産業廃棄物の「処理」は、単に廃棄物を捨てることだけを意味するものではありません。
環境省は、建設廃棄物に関する通知の中で、「処理」には
分別、保管、収集、運搬、再生、処分など
が含まれるとしています。
また、「処分」については、中間処理と最終処分を指すものとされています。
中間処理が、廃棄物の減量・減容化、安定化、無害化、再生などを目的とした処理なのに対し、最終処分は、埋立処分などを指します。
したがって、産業廃棄物の「収集運搬」と「処分」は、産業廃棄物を処理する一連の流れの中にある、別々の業務ということになります。
産業廃棄物収集運搬業とは、他人から委託を受けて産業廃棄物を収集し、処分場などへ運搬することを業として行うものです。
例えば、建設会社が建物の解体工事を行い、そこで木くずやがれき類などの産業廃棄物が発生したとします。
排出事業者から委託を受けた収集運搬業者は、排出場所で産業廃棄物を収集し、契約した処分業者の処分場などへ運搬します。
このように、収集運搬業者の基本的な役割は、「産業廃棄物を適正な処分先まで運ぶこと」です。
なお、ここでいう「収集運搬業」は、単に自社から出た廃棄物を自社で運ぶ場合とは異なります。
自社の産業廃棄物を自ら運搬する場合には、産業廃棄物収集運搬業の許可が必要となるわけではありません。
つまり、許可が問題になるのは、基本的に「他人から委託を受けて産業廃棄物の収集・運搬を業として行う場合」です。
一方、産業廃棄物処分業は、産業廃棄物の処分を業として行うものです。
ここでいう「処分」は、単に廃棄物をどこかに置くという意味ではありません。
例えば、産業廃棄物を破砕して減容化したり、焼却したり、選別して再生利用につなげたり、最終処分場で埋立処分したりすることなどが該当します。
処分業は、収集運搬業と比較すると、処理施設や処理設備などが関係するため、事業の内容によってはより高度な設備要件や技術的能力が求められます。
両者の違いを簡単に整理すると、次のようになります。
| 項目 | 産業廃棄物収集運搬業 | 産業廃棄物処分業 |
|---|---|---|
| 主な業務 | 産業廃棄物を収集・運搬する | 産業廃棄物を処分する |
| 主な場所 | 排出事業所から処分場等まで | 中間処理施設・最終処分場等 |
| 車両 | 原則として運搬車両が必要 | 処理内容に応じた施設・設備が必要 |
| 許可 | 収集運搬業の許可 | 処分業の許可 |
| 業務のイメージ | 「運ぶ」 | 「処理する」 |

つまり、非常に単純化すると、
排出事業者 → 収集運搬業者 → 処分業者
という流れになります。
例えば建設現場から産業廃棄物が出た場合、収集運搬業者が現場から処分施設まで運び、処分業者がその産業廃棄物を処理します。
ここは、産業廃棄物収集運搬業を始めようとする方にとって非常に重要なポイントです。
産業廃棄物収集運搬業の許可を取得しただけでは、産業廃棄物の処分を業として行うことはできません。
収集運搬と処分は、それぞれ別の許可制度になっているためです。
廃棄物処理法第14条では、収集・運搬について第1項、処分について第6項でそれぞれ許可を定めています。
さらに、収集運搬業者と処分業者について、それぞれの業務を適正に行うことが求められています。
したがって、収集運搬業者が処分まで請け負いたい場合には、処分業の許可についても検討する必要があります。
「収集運搬業者は処分をしないのであれば、集めた産業廃棄物をどこへ持っていくのか」という疑問が出てくると思います。
基本的には、排出事業者と契約した処分業者の処分施設などへ運搬します。
例えば、建設会社から「解体工事で発生した産業廃棄物を処分場まで運んでほしい」と依頼された場合、収集運搬業者は産業廃棄物を収集し、契約上の処分先まで運搬します。
このとき、収集運搬業者と処分業者は別の会社であっても構いません。
産業廃棄物収集運搬業について調べていると、「積替え保管」という言葉も出てきます。
積替え保管とは、産業廃棄物を収集した後、すぐに処分施設へ運搬するのではなく、一定の場所で別の車両へ積み替えたり、一時的に保管したりすることです。
例えば、収集した産業廃棄物を自社の保管場所に一度持ち帰り、一定量が集まった段階で大型車両に積み替えて処分施設へ運ぶような事業形態です。
一方、「積替え保管なし」であれば、基本的には排出場所で産業廃棄物を収集し、そのまま処分施設などへ運搬します。
産業廃棄物収集運搬業と処分業はいずれも、原則として都道府県知事等の許可を受ける制度です。
ただし、収集運搬業の場合は、単純に「会社の所在地を管轄する都道府県から許可を取れば全国で運べる」という制度ではありません。
特に、産業廃棄物をどこで積み込み、どこで荷下ろしするのかが重要になります。
そのため、例えば埼玉県内の建設現場で産業廃棄物を収集し、千葉県の処分場へ運搬する場合には、単純に「埼玉県の許可だけでよい」と考えるのではなく、積卸しを行う区域を確認して必要な許可を判断する必要があります。
産業廃棄物収集運搬業は、一般の運送業とは異なります。
産業廃棄物を適正に処理するためには、排出事業者、収集運搬業者、処分業者がそれぞれ適切な役割を果たす必要があります。
また、産業廃棄物の処理を委託する際には、委託契約やマニフェストなど、廃棄物処理法に基づく管理も関係します。
環境省は、マニフェストについて、排出事業者が産業廃棄物の処理が適正に終了したことを確認するための廃棄物管理票と説明しています。
そのため、収集運搬業者として事業を行う場合には、「トラックで廃棄物を運べばよい」という理解ではなく、廃棄物処理法上のルールを理解し、適切に管理・運用することが重要です。
産業廃棄物収集運搬業と産業廃棄物処分業は、どちらも産業廃棄物の適正処理に関係する許可ですが、役割は明確に異なります。
収集運搬業は、排出事業者から産業廃棄物を収集し、処分施設などへ運搬する業務です。
これに対して
処分業は、産業廃棄物を中間処理したり、最終処分したりする業務です。
そのため、産業廃棄物収集運搬業の許可を持っているからといって、処分業まで行えるわけではありません。
収集運搬と処分は、それぞれ別の許可制度として考える必要があります。
産業廃棄物の処理は、廃棄物処理法を中心とした複雑なルールによって規制されています。
許可を取得して事業を始める場合には、単に申請書を提出するだけでなく、自社がどのような形で産業廃棄物を取り扱うのかを整理したうえで、必要な許可を確認することが重要です。
参考: 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(e-Gov法令検索)
参考: 産業廃棄物収集運搬業の許可(環境省)
参考: 産業廃棄物処理業の概要(埼玉県)