更新日:2026/08/23
「産業廃棄物」と「一般廃棄物」は、どちらも廃棄物処理法に基づいて処理される廃棄物ですが、分類の考え方や処理責任、許可制度などに違いがあります。
特に重要なのは、「事業所から出たごみ=産業廃棄物」ではないという点です。
産業廃棄物は、廃棄物処理法で定められた20種類の廃棄物のうち、一定の事業活動に伴って発生するものなどを指します。
一方、一般廃棄物は、産業廃棄物以外の廃棄物を指します。
そのため、同じような「紙くず」や「木くず」であっても、どこから、どのような事業活動によって発生したのかによって、産業廃棄物になる場合と一般廃棄物になる場合があります。
そもそも、なぜ廃棄物は「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分けられているのでしょうか。
その背景には、廃棄物が発生する原因と、その処理を誰が担うべきなのかという考え方の違いがあります。
一般廃棄物は、主として国民の日常生活から発生する廃棄物を中心としたものであり、一般家庭から出るごみについては、市町村が処理主体となる仕組みが基本となっています。
これに対して、産業廃棄物は、事業活動に伴って発生する廃棄物のうち、法律で定められたものです。
事業によって利益を得ている事業者によって発生した廃棄物を、住民の税金による一般廃棄物の処理に委ねるのは適切ではありません。
そこで、産業廃棄物については、「排出した事業者が自らの責任で処理する」という排出事業者責任の原則が採用されています。
日常生活から生じる一般廃棄物については市町村が処理体制を整備し、事業活動から生じる産業廃棄物については、その事業活動を行った事業者が処理費用を負担して適正に処理するという役割分担になっています。
注意したいのは、「事業所から出た廃棄物はすべて事業者が自費で処理する産業廃棄物」という意味ではないことです。
事業活動から発生した廃棄物であっても、産業廃棄物に該当しないものは「事業系一般廃棄物」となります。
したがって、産業廃棄物と一般廃棄物を分けている理由は、単に「ごみの種類が違うから」ではありません。
どのような活動から廃棄物が発生したのか、誰がその処理について責任を負うのか、そしてどのような処理体系によって生活環境を守るのかという考え方に基づいて、法律上の役割分担が設けられているのです。
まず、産業廃棄物と一般廃棄物を理解するためには、「廃棄物」という言葉の意味を確認しておく必要があります。
廃棄物処理法では、廃棄物を
「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物」
と定義しています。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律
第二条 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。
そして、廃棄物は大きく分けると、産業廃棄物と一般廃棄物に分類されます。
一般的には、次のように考えると分かりやすいです。
廃棄物は産業廃棄物と一般廃棄物に分類されます。
さらに、一般廃棄物には家庭から出る「家庭系一般廃棄物」だけでなく、事業活動によって発生する「事業系一般廃棄物」もあります。
したがって、「家庭ごみ=一般廃棄物、会社のごみ=産業廃棄物」という単純な区分ではありません。
産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、廃棄物処理法で定められた20種類の廃棄物などをいいます。
代表的なものとして、廃プラスチック類、金属くず、がれき類、廃油、汚泥などがあります。
例えば、建設工事で発生したコンクリート片やアスファルト片は「がれき類」という産業廃棄物に該当します。
また、工場から発生する廃油や廃プラスチック類、金属加工で発生する金属くずなども、産業廃棄物に該当することがあります。
産業廃棄物については、排出事業者が自ら適正に処理するか、許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託するなどして適正に処理する必要があります。
一般廃棄物とは、簡単にいうと、産業廃棄物以外の廃棄物です。
一般家庭から出る生ごみ、紙ごみ、衣類、家具などの家庭ごみが代表的です。
しかし、一般廃棄物は家庭ごみに限られません。
事業所から発生する廃棄物であっても、産業廃棄物に該当しないものは、基本的に一般廃棄物となります。
例えば、一般的なオフィスから出る使用済みの紙類は、紙くずという名称だけを見れば産業廃棄物のように思えるかもしれません。
しかし、紙くずが産業廃棄物となるのは、法律上定められた一定の業種から発生した場合などに限られます。
そのため、一般的な事務所から排出される紙ごみは、事業系一般廃棄物として扱われることがあります。
産業廃棄物を勉強するときに、最初につまずきやすいのがこのポイントです。
例えば、会社のオフィスから紙ごみが出たとします。
「会社から出たごみだから産業廃棄物」と考えるのは誤りです。
産業廃棄物の20種類の中には「紙くず」がありますが、紙くずであれば無条件に産業廃棄物になるわけではありません。
紙くずについては、紙・紙加工品の製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業など、法令で定められた一定の業種から発生したものが産業廃棄物となります。
そのため、例えば一般的な建設会社の事務所から発生したコピー用紙などについては、建設工事に伴って発生する紙くずとは区別して考える必要があります。
このように、廃棄物の種類だけでなく、排出事業者の業種や発生状況を確認することが重要です。
産業廃棄物と一般廃棄物の判断が難しい理由の一つが、同じような物でも発生状況によって分類が変わることです。
例えば「木くず」を考えてみます。
建設工事に伴って発生した木くずは、産業廃棄物に該当します。
一方、一般家庭から出た家具や剪定枝などは、同じ「木」という素材を含んでいても、産業廃棄物として扱われるわけではありません。
また、製材業や木材・木製品製造業などから発生する木くずについても、産業廃棄物として扱われます。
このように、「何でできているか」だけではなく、どこから、どのような過程で発生したものなのかを見る必要があります。
事業活動によって発生する一般廃棄物を「事業系一般廃棄物」と呼びます。
例えば、オフィスや店舗などから発生する廃棄物のうち、産業廃棄物に該当しないものがこれに当たります。
代表的なものとして、事業所から出る生ごみや、一定の条件における紙ごみなどがあります。
産業廃棄物と一般廃棄物では、処理を担う主体にも違いがあります。
一般廃棄物については、市町村が一般廃棄物の処理について統括的な責任を負っています。
一方、産業廃棄物については、排出事業者が自らの責任で適正に処理することが原則です。
この考え方は、産業廃棄物を扱ううえで非常に重要です。
例えば、建設会社が工事現場から産業廃棄物を排出した場合、その建設会社は排出事業者として、産業廃棄物を適正に処理する責任を負います。
処理を産業廃棄物処理業者に委託したとしても、排出事業者としての責任がなくなるわけではありません。
産業廃棄物について理解するうえで、「排出事業者責任」は非常に重要な考え方です。
廃棄物処理法では、事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないとされています。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律
第三条 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
そのため、産業廃棄物の処理を業者に委託する場合でも、排出事業者は委託先が適切な許可を取得しているか、委託する廃棄物の種類を適切に扱えるかなどを確認する必要があります。
産業廃棄物の収集運搬業者として仕事をする場合にも、この排出事業者責任を理解しておくことが重要です。
産業廃棄物と一般廃棄物では、収集運搬業の許可制度も異なります。
産業廃棄物を業として収集・運搬する場合は、原則として都道府県知事等の許可が必要です。
これが「産業廃棄物収集運搬業許可」です。
例えば、建設会社から依頼を受けて、工事現場から排出された廃プラスチック類や金属くず、がれき類などを処分場まで運搬する事業を行う場合には、産業廃棄物収集運搬業の許可が問題になります。
一方、一般廃棄物の収集運搬業については、市町村長の許可が基本となります。
したがって、産業廃棄物収集運搬業の許可を持っていれば、一般廃棄物も収集運搬できるというわけではありません。
逆の場合も同様です。
ここは、これから産業廃棄物収集運搬業を始める方にとって特に重要なポイントです。
「廃棄物を運ぶ仕事だから、産業廃棄物の許可を取れば何でも運べる」と考えることはできません。
産業廃棄物と一般廃棄物では、それぞれ別の許可制度があります。
そのため、例えば一般家庭から出た家庭ごみを収集運搬する仕事と、建設会社から排出されたがれき類を処分場まで運搬する仕事では、必要となる許可が異なります。
産業廃棄物収集運搬業を開業する場合には、自分がどのような排出事業者から、どのような廃棄物を収集し、どこへ運搬するのかを明確にすることが重要です。
産業廃棄物の中には、「特別管理産業廃棄物」に該当するものがあります。
特別管理産業廃棄物とは、爆発性、毒性、感染性その他、人の健康または生活環境に被害を生じるおそれがある性状を有する産業廃棄物です。
代表例として、感染性産業廃棄物、廃石綿等、廃PCB等があります。
特別管理産業廃棄物を収集運搬する場合には、通常の産業廃棄物収集運搬業とは別の許可が必要になります。
そのため、産業廃棄物収集運搬業の許可を取得しているからといって、特別管理産業廃棄物まで取り扱えるわけではありません。
産業廃棄物と一般廃棄物の違いは、単純に「事業所から出るごみ」と「家庭から出るごみ」という区分ではありません。
産業廃棄物は、廃棄物処理法で定められた20種類の廃棄物のうち、法律上産業廃棄物として扱われるものです。
一方、一般廃棄物は産業廃棄物以外の廃棄物であり、家庭から出るごみだけでなく、事業活動から発生する事業系一般廃棄物も含まれます。
特に重要なのは、同じ「紙くず」「木くず」などでも、発生した業種や事業活動によって産業廃棄物になるかどうかが変わる場合があるということです。
これから産業廃棄物収集運搬業の許可を取得する方は、まず産業廃棄物20種類の分類を理解し、そのうえで排出事業者責任、マニフェスト、収集運搬業許可などについて学んでいくと、制度全体を理解しやすくなります。