近年、インターネットを利用した取引が急速に普及しています。 それに伴い、対面でのやり取りを行わない「非対面取引」における本人確認の重要性が高まっています。 本記事では、インターネット取引における古物商の本人確認義務の取り扱いについて解説します。

メルカリやヤフオクでの本人確認について

近年、通信技術の発達により、メルカリやヤフオクなどのインターネットサイトを通じて古物の取引を行う方が増えています。
ご利用経験のある方はお分かりかと思いますが、インターネットを介した取引は匿名性が高く、取引相手の本人確認を直接行う機会はほとんどありません。
しかし、古物の取引においては、法律上、原則として本人確認が求められています。


本記事では、「インターネットを利用した古物取引において、本人確認は必要なのか」 について詳しく解説します。



インターネットにおける古物取引でも本人確認は必要です。

警視庁のホームページには、

「インターネットオークションやフリマアプリを利用した取引であっても、相手方の確認は必要です。」
「オークションサイトやフリマアプリを利用して、古物商であることを表示せずに取引を行うことはできません。」
参考 ☞警視庁

と、明示されています。


このことから、非対面の取引であっても、古物商は法律に定められた各種義務を遵守する必要があることが分かります。



古物商における本人確認義務について

古物商には、以下のような取引の際に本人確認が必要です。


① 古物を買い受ける
② 古物を交換する
③ 売却若しくは交換の委託を受けようとするとき


原則として、古物の払い出し(売却)時には本人確認の必要はありません。
また、1万円未満の買取時も本人確認は免除されます。
しかし、以下の特定の古物の場合は、買取時に1万円未満でも本人確認や帳簿への記録が義務付けられています。



買取時に1万円未満でも本人確認が必要な古物

・1万円未満の古物を仕入(買取)する場合
※1万円以下でもバイク、原付、ゲームソフト、CD、DVD、書籍などは盗難被害が多いため記録を免除されません。その関連製品(パーツ等)も同様です。


・特定の古物を払い出し(売却)した場合
※払い出し時の記録は原則義務づけられていませんが、美術品類、時計・宝飾品類、自動車、自動二輪車及び原動機付自転車(パーツ含む)かつ総額が1万円以上に該当する古物は帳簿への記録が必要になります。


※本人確認が免除されている取引であっても、未成年との取引には注意が必要です。未成年者との取引では、古物の返却や代金の返金を求められる可能性があるほか、各自治体の条例に抵触する恐れもあります。そのため、年齢確認は行っておくべきでしょう。



メルカリ・ヤフオクにおける取引と本人確認

メルカリやヤフオクは、基本的に匿名性が高く、個人間取引を前提としたプラットフォームです。


利用者は「売る」「買う」の立場をとりますが、プラットフォーム上で本人確認が必ずしも厳格に行われているわけではありません。


① 古物商が購入者として利用する場合(仕入れ目的)

古物商がメルカリ等で商品を購入して仕入れる場合には、古物営業法に基づき、販売者の本人確認が必要です。
出品者の詳細な個人情報を取引相手に開示しないまま購入することは、法令違反のリスクがあります。
仕入れの際は、プラットフォーム上で得られる情報だけでは不十分な場合があるため、必要な確認を行うことが重要です。



② 古物商が販売者として利用する場合

メルカリやヤフオクで商品を販売する立場では、購入者の本人確認は法律上の義務ではありません。
本人確認義務は、あくまで仕入れ(購入)時にのみ発生します。



本人確認義務に違反した際の罰則

古物営業法に基づく本人確認義務に違反した場合、刑事罰および行政処分の対象となる可能性があります。


刑事罰
最大 6か月の拘禁刑
最大 30万円の罰金
上記 拘禁刑と罰金の両方 が科される場合もあります


行政処分
最大 6か月の営業停止
古物商営業許可の取消し



まとめ

現在では、国民のほとんどがスマートフォンやパソコンを所有し、情報化社会がますます進展しています。
インターネット上には便利なプラットフォームも増え、個人間の取引も非常に手軽になってきました。
しかし、古物商の世界では、こうした変化に対して法整備がまだ十分に追いついていないと感じている方も多いのではないでしょうか。
そのため、不便さを感じる場面も少なくありません。
とはいえ、古物営業法をはじめとする関係法令には厳しい罰則も定められており、法律を守らずに取引を行うと大きなリスクを伴います。
正しい知識を持ち、法律を遵守しながら、安心・安全で楽しい古物ライフを送っていただければと思います。